雑感16 <一隅を照らす者、これ国宝なり>

神渡良平氏の講演要旨

  一生は一回しかない。貴重な人生を、取りこぼさないためにはどう
したらいいか。相手の不安、寂しさ、疑念をどうして取り去る事がで
きるか。親鸞は、歎異抄で説く。「善人なおもて往生する。ましてい
わんや悪人をや。」人生の最後の最後、人々にありがとうと言える人
生を送りたい。こういう人間になりたい、こういう人生を送りたいと
いう人間の想念が、自分自身を作り上げていく。気付くのに遅すぎる
という事はない。決して自分の人生を投げ出すな。地湧の菩薩達。
地から湧き出るような優れた人、キラリと光るものを持つ人、となり
たい。

 良いことも悪いこともすべて受け入れる。受容する。自分にないも
のをほしがるな。他人と見比べるのではなく、あなた自身の土俵で相
撲をとりなさい。他人の評価、他人の目に左右されるな。自分のひけ
目、弱点、悩み事をも、すべて受け入れなさい。早過ぎもせず遅過ぎ
もせず、人間は会うべき人に必ず会わされる。自分を超えた不幸が襲
ったとしても、大きな気付きをいただいて、大きく目が開かれると信
じよ。自分の頭では理解できないことが起こった時に、それを他人の
せいにしているうちは、この気付きはない。そのことは、私に対する
何らかのメッセージであると知れ。

  人生には、意味のないものはない。自然界がそうであるように、人
間も、根雪が溶けて、水がゆるみ、花が開くと認識せよ。人間の能力を
引き上げるには、内観が大きな役割を果たす。外からの刺激、周囲の関
係から一切を遮断する。コップに注いだ泥水のきれいな上澄みの水の
ごとく、次第に心のしこりが解けていく。泥が静かに沈んでいくよう
に、人の心に引っかかっていた苦悩が沈んでいく。父、母の事を静かに
振り返るのが最高の方法。内観は自分探しの旅。自分が一切の過去の
制約から解き放され自縄自縛から抜け出よ。

 野口雨情は、女の子が授かったが、彼女は、70日でその幼い命を
絶った。彼は、失意のうちに人生を投げ出した。いつもやけ酒をくらっ
て、怠惰な生活が続いた。ある時一念発起し、あの亡くなった女の子
の為に、頑張ろうと決意する。

  「シャボン玉飛んだ。屋根まで飛んだ。

   屋根まで飛んで、こわれて消えた。

   シャボン玉消えた。飛ばずに消えた。

   生まれてすぐに、こわれて消えた。

   風、風吹くな。シャボン玉飛ばそう。」

  笑顔の子供たちの楽しい明るい状況をイメージして歌ったと思ってい
たこの童謡に、このような野口雨情の心打つ隠れた話があったとは。 
多くの人のお世話に対して、おかげ様で、ありがとうという感謝の気持ち
を具体的に発揮するには、仕事以外にはないのではないか。

最澄は説く。

「一隅を照らす者、これ国宝なり。」

                                         鈴木誠一拝