雑感79
<ULTIMATE CRUSH(荒ぶる早大ラグビーの真髄)>

 早大ラグビーの快進撃が続いている。昨日12月22日(日)花園ラグビー場での
全国大学選手権準々決勝でも、我が荒ぶる早大ラグビー(関東対抗戦1)は、計12
トライの猛攻で東海大を76−17と圧倒した。 今季は、対抗戦では、東大 を
156−0、 青山学院大を128−7、筑波大を43−13、日体大 を90−23、
帝京大を64−10、慶大を74−5、明大を24−0を危なげなく撃破している。
全国大学選手権一回戦は、流通経済大を79−3と快勝した。

 大正7年(1918年)井上成意氏等が早稲田ラグビー部を創部する。昭和2年豪州
遠征「ゆさぶり戦法」を編み出し、縦の明治、横の早稲田で数々の早明戦の名勝負を演
出してきた。早明戦は早稲田にとってどんな試合よりも、どんな事よりも大切なもので
ある。明治に負けたら早稲田でなくなる。早明戦に懸ける熱い熱い思い。早稲田として
のプライド、存在意義。攻める明治。耐える早稲田。自陣に釘付け。ゴールラインを背
にする早稲田。スクラム、モール、サイドアタック。明治伝統の波状攻撃にひたすら耐
える時間が続く。まさに死闘、激闘。これこそが早稲田にとって最大の見せ場。早明戦
の真骨頂。我慢に我慢を重ねて、早稲田の知が集約された見事なプレーで勝利を大きく
引き寄せる。エンジン全開で攻め続ける早稲田。怒涛の波状攻撃、ディフェンスを切り
裂き、歓喜の雄叫び。明治を倒せたら他には何もいらない。互いを尊重し、すべてを出
し合える最高のライバル、早稲田と明治。そこには観衆を魅了し続けた言葉では言い表
せない偉大な何かが存在する。あの頃の早明戦と同じ光景。早稲田と明治にしか成し得
ない最高の戦い。ラグビーは、やはり早明戦、いつでも、どんな時でも早明戦は色褪せ
ない。

 エンジと黒のジャージーに袖を通す事が、ラガーにとっての憧れであった。技を磨き、
戦法を磨き、「カンペイ」というサインプレーが生まれ、ここぞというチャンスに実践
し得点した。ひたむきで果敢な俊敏なプレイこそが、早稲田ラグビーの真骨頂である。
ラグビーを愛する不断の思いと技術の継承、新しい戦法を育んできた創造性が早稲田ラ
グビーを進化させてきた。15人が一体となった激しく、華麗なプレーが早稲田ラグビ
ーの美学である。力強いコンタクト、激しいスイープ、連続的な高速アタック、切れ味
するどいラインブレイク、80分間途切れる事のない集中力が、監督就任2期目の清宮
監督の「頂点を獲る。」という強い意思の表われである。「常に頂点を見据えた戦いを
しろ。」と言い続ける。早大の総帥であった故大西鐵之祐、元監督の秘蔵ノートを丹念
に解読し、実践に移している。大西理論を進化させている。「目的地に到達するにはい
くつもの道がある。そのため、ひとつの道しか知らない選手達にさまざまなルートを示
し、引き出しをいっぱい用意することを心がけている。」

  ULTIMATE CRUSH は、究極、理想を目指す早稲田ラグビーの真髄である。早稲田ラグビ
ーに妥協の2文字は存在しない。緩いプレーは一つたりとも許さない。敵がどうこうでは
なくて、自分達がいかにULTIMATEできるか。ULTIMATE CRUSH を15人が一体となって誓
い合う事で圧倒的な力を見せ付けて、覇権奪回をめざす。追い求めるは相対的ではなく、
自分達の中にある絶対的な強さ。敵は己の中にあり。究極、徹底、こだわりが早稲田ラグ
ビーを進化させ続ける。

 私が入部した時、早稲田大学が新日鉄釜石を破り日本一に輝いた黄金時代である。
1、栗本利見、2、高橋哲司 、 3、主将、大東和美、4、阿部憲之、5、津留崎鉄二、 
6、久保田勇、7、萩原隆男、 8、益田清、9、宿沢広朗、10、中村康司、 
11、佐藤秀幸、12、藤井雅英、13、平岡惟史、14、堀口孝 、15、小林正幸、
日比野弘監督の下でのすばらしい黄金のバックスを要したチームであった。 

 翌年、早稲田大学は、三菱自工京都を破って、連覇している。
1、田原洋公、2、高橋哲司、3、奥田泰三、4、中村賢治、5、津留崎鉄二、
 6、神山郁雄、7、萩原隆男、8、主将、益田清、9、宿沢広朗、10、中村康司、 
11、金指敦彦、 12、藤井雅英、13、佐藤秀幸、14、堀口孝、15、植山信幸、 
ノーサイド残り時間3分、 佐藤の低いパントがゴールの右隅へ飛んだ。堀口の目の前に
ポーンと跳ね上がった。早大藤井が先制トライ。宿沢が拾い、防御陣を抜いてトライ
(佐藤ゴール)、佐藤のパントから堀口の快走を引き出して競り勝った。

  早稲田大学が同志社大学を破って大学日本一に返り咲いた時のフィフテーンである。
1、主将、永田隆憲、 2、森島弘光、3、頓所昭彦、 4、弘田知巳、5、篠原太郎、
6、神田識二郎、 7、清田真央、 8、清宮克幸、 9、堀越正巳、10、前田夏洋、 
11、今泉清 、12、副将、今駒憲二、 13、藤掛三男、14、桑島靖明、
15、加藤進一郎 、
 このメンバーは、日本選手権で東芝府中を撃破して、日本一に輝く。木本監督の下、
早大は堀越、藤掛、今泉の新人トリオが大活躍した。センター藤掛が縦突破が記憶に
新しい。木本監督の今泉、藤掛のバックス転向で、人に強いバックスを作った。タッ
クルされるプレーヤーは相手に当たって沈み、サポ ートに集まったプレーヤーがボー
ルを拾わずに相手に組んでいくラックの形が完成した。すばやい球出しの低いラックは、
テンポの良いバックスプレーを引き出した。忘れられないのがウイング、エース桑島の
3トライである。この時の東芝府中監督が早稲田OB中村賢治監督であった事も何か因縁
めいている。

 早稲田大学が日体体育大学を破って大学日本一を連覇した時のフィフテーンである。
1、岩下伸行 、2、森島弘光、3、亀井竜二、4、春日康利、5、後藤禎和、
6、打矢二郎 、7、相良南海夫、8、主将、清宮克幸、9、堀越正巳、10、前田夏洋、
11、吉村恒、12、吉雄潤、13、泥成弥、14、郷田正、15、今泉清、 
 横の早稲田から縦と横の早稲田への展開ラグビーか完成した。一瞬で守から攻へ。フォ
ワード 、バックス問わず次々と縦を突き、ラック連取から、一転、二人飛ばしのロング
パス。攻めて続けてラックを連取すれば、相手プレーヤーがラックに巻き込まれ数が余っ
てしまい、フィニッシュはお家芸の華麗なバックスプレイでトライを奪う。

  今年のULTIMATE CRUSH 実践のフィフテーンである。 
1、 大江菊臣、 2、 阿部一樹、 3、伊藤雄大、(東野憲照、屋比久健 ) 4、高森雅和、
5、桑江崇行、 6、羽生憲久、 7、川上力也、8、佐々木隆道、 9、田原耕太郎、
10、大田尾竜彦、(安藤栄治)11、仲山聡、12、豊山寛 13、山下大悟、
14、山岡正典、15、 内藤慎平、 
  私は今年のフィフテーンは、栄光の早稲田ラグビーの中でも、最強のチームと見る。ラグ
ビーは、派手なアタックより、地味なデフェンスにその強さを見る。早稲田のゴール前の鉄
壁の得点を許さない組織ディフェンスが、蘇った。倒れても倒れても次々に起き上がってデ
ィフェンスにいくゾンビディフェンスが再現された。2人目のタックルを全員が忠実に実行
している。
 決勝戦で対決するであろう関東学院戦は、課題はスクラムとラインアウトと考える。関東
学院は、ラインアウトはうまく強い。関東お得意のラインアウトからのアタックを少しのゲ
インも許さず、いかに完璧に止めるか。フォワードの密集戦で、関東の超重量フォワードの
サイドアタックで体力を奪われず、接点でのボールの奪い合いに互角に渡り合えるかである。
少ないチャンスをどう生かすか、そしていかにマイボールを継続させられるかである。低く
刺さるタックル。早稲田フォワードは、少人数でボールを出し、素早く揺さぶる。こぼれ球
のセービングを確実にしする。セットでのマイボールの安定供給を確実にする。そして何よ
りもタックルからボールを奪い、攻撃につなげるアタッキングタックル(アタックル、今の
ターンオーバー)を多くしかける。

 今年の早稲田はバックスだけでなく、安定したフォワードが力強い。フォワードの基本プ
レーの精度を上げ続けている。高森、桑江の激しくゲインラインを突破し続けるロック陣の
迫力ある突進、密集サイドを豪快に突破し続けるシーンを数多くみかける。追いすがる相手
を叩き落とし、相手のタックルをものともしないパワー、相手を振りきるスピードに今季の
早稲田フォワード、進化の証を見る。スピード、パワー、テクニック、すべての局面で相手
を凌駕する力を、今年の早稲田フォワードは身につけている。空いているスペースを攻める
のがラグビーの鉄則であるので、空いている近場を徹底して突破する。バックス陣の華麗な
球さばき、見事な凄まじい高速アタックにお得意のノーホイッスルトライの連発も夢ではな
い。「自分達のラグビーができれば絶対に負けない。」と信じて、ボールを大きく、電光石
火の早く動かすラグビーに徹してほしい。長く正確なパスと、ギャップを巧みに突くランニ
ング、フォワード、バックス一体となった見事な継続展開ラグビーでトライを演出してほし
い。ラインブレイクは、山下が核となって、抜群の切れで相手防御網を切り裂いてほしい。
蹴らないラグビーは、狙っている次元、目指している次元が違う。より高い次元を求めてキ
ックを蹴らない。継続、高速、激しさ、早稲田の凝縮された見事なアタックの強さを見せ付
けてほしい。ULTIMATE SWEEP。ブレイクダウンの攻防で相手を圧倒し、完膚なきまでに相手
を叩きのめして、圧倒的な力を見せつけて、頂点に上り詰めてほしい。来年1月2日(木)
は、国立競技場での準決勝、12:15pmからの関東学院大−帝京大戦、2:00pmか
らの早大−法大戦、今から楽しみである。国立競技場での1月11日(木)2:10pmか
らの決勝戦は、荒ぶる早稲田ラグビーの集大成を見せてくれる事だろう。

 試合前、部屋を真っ暗にし、部歌北風を絶唱する。清宮監督は、寄せ書きの中央に『一』
力強く書き込み、これまで練習してきたプレーを一つ一つしっかりやり、気持ちを一つにし、
チームが一つなりULTIMATE CRUSH を実践する事を誓い合う。その時、荒ぶる早稲田ラグビ
ーが完全復活する。来年正月こそ、史上最強の荒ぶる魂早大ラグビー完全復活である。
                      平成14年12月23日(月)鈴木誠一拝