雑感62<不作為の罪>


  又、伝統と技術を持つ大事な会社を失った。
準大手ゼネコン(総合建設会社)で東証一部上場の佐藤工業は、
自力再建を断念し、会社更生法の適用を、3月3日(日)に
東京地裁に提出した。連結ベースの負債総額は4499億円で、
今年最大の倒産となる。佐藤工業は、1862年(文久2年)
富山県発祥の名門ゼネコンである。バブル期に拡大したリゾート
事業などの不動産開発事業が行き詰まり、事業の柱である土木は、
公共事業の削減で停滞、民間設備投資の減少による受注競争の激
化も収益に痛手となった。バブル期に手がけたリゾート、ゴルフ
場開発事業などへの積極投資がたたって経営が悪化した。トンネ
ルやダムなどの大型土木工事を得意とし、青函トンネル工事など
も手がけた。

  私は、佐藤工業には、他ならぬ思い入れがあった。大学時代、
東伏見のラグビー寮にいた私は、週末には、母の妹であった叔母
のいる所沢に行き、泥だらけのジャージを洗濯してもらいに、泊
りがけでよく遊びに行った。伯父は、7年程前に定年で退職したが、
当時、佐藤工業の本社の設計部長として活躍されており、博識の
伯父の話を聞くのが楽しみで遊びに行ったものだ。帰りは、いつも
終電で12時近くで、翌日、日曜日でも6時には、出勤するほど
激務であった事を思い出す。佐藤工業は、忙しい会社だと、学生な
がら、強く印象付けられたものである。

  鈴屋金物に入社してからも、営業として、多くの佐藤工業の現場
で、仕事をお世話になった。私にとっては、最もお世話になった建
設会社の一つであったといっても過言でない。伯父の直接の部下で
あった所長に、今度は、私が仕事の上で、多くのご薫陶を受けた。
2年前に、断腸の想いで、信用不安から、取引から退く事となった
が、鈴屋金物が、佐藤工業から受けた御恩は、計り知れない。
ありがとうございました。

   山下公民館、仙台博物館、第三合同庁舎、プルミェールホテル箕輪、
多賀城ロジュマンF棟、大昭和製紙、ピートダイゴルフクラブ、槻木
駅前町営住宅、七ヶ宿ダム、原町市立病院、猪苗代リステルタワー館、
寒河江曙ブレーキ、宮城産業交流センター、盛岡新庄浄水場、白河ウ
ェストビレッジ、船岡サンコア、東日本ハウス鴬宿ケンジワールド、
槻木公民館、老人保健施設アルカディアウエル、名取市文化会館、
そして多くのマンション、社屋、雑居ビル、そして最後の仕事となっ
た駅裏のヨドバシカメラと、一つ一つの現場に想い出がたくさんある。
経営が大変厳しいとは、心配していたが、何とか再建の道をと、陰な
がら念じていたが、ほんとうに残念である。安直に公共事業は悪という
一部マスコミの風聞を作り、煽った罪も許しがたい。

  今、建設業は、ゼネコン、サブコンを含めて、生き残りをかけて、
懸命な死にもの狂いの経営努力を重ねている。それに比べて、政治家、
官僚の腐りきった遅々として進まぬ構造改革を見るにつけ、政府の
不作為の罪で、日本の誇るべき宝であった伝統と技術を持つ大事な
かけがえのない名門会社を又一つ失ってしまった。政治家達よ、
官僚達よ、己の不作為の罪をどこまで、民間にかぶせるつもりか。
まず我が身をもって、構造改革を示してみてはどうか。

                            平成14年3月3日(日)鈴木誠一拝