雑感74
<日朝平壌宣言、日朝国交正常化が意味するもの>

  平成14年9月17日(火)小泉純一郎首相と北朝鮮の金正日
(キムジョンイル)総書記、国防委員長の間で歴史的な日朝平壌
宣言が採択された。日朝平壌宣言では、日朝間の不幸な過去を清
算し、日朝国交正常化を早期に実現し、地域の平和と安定に寄与
したいと宣言した。日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮
の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史事実を謙虚に受け
止め、痛切な反省とおわびの気持ちを表明した。北朝鮮側は、日
本人拉致事件、不審船は、北朝鮮の罪である事を初めて認めた。
ミサイル発射のモラトリアムの延長、請求権を相互に放棄すると
いう北朝鮮の譲歩を引き出した。しかし、今まで拉致はあり得な
いと言ってきた、北朝鮮から日本人拉致事件被害者の8人死亡と
いう残酷すぎる衝撃的な結果を示された。
 
 遠い隣国であり続けた北朝鮮との戦後半世紀以上も封印されて
きた重い厚い扉がようやく開き始めた。互いの安全を脅かす行動
をとらない事を確認し、日本側は、低金利の長期借款供与、人道
主義的支援を実施する事を約束した。小泉純一郎首相自身が痛恨
の極みと表現した拉致事件に対して、キムジョンイル総書記は、
「忌まわしい出来事だ。遺憾なことであったことを率直におわび
したい。二度と過ちを犯す事はない。」と日本人拉致事件を認め、
謝罪した。北朝鮮はこれまで誤りを認めない国で、日本人拉致、
不審船の事件が北朝鮮の工作機関によって行われたことを認め、
謝罪した事は、画期的な事である。朝鮮半島では、依然として、
38度線をはさんで、南北の軍事力が対峙し、北朝鮮の核、ミサ
イル開発疑惑も完全に払拭されたわけではない。 

小泉純一郎首相の記者会見での要旨である。
 日本人拉致事件に関しては、帰国を果たせず、亡くなられた方々
の事を思うと痛恨の極みだ。家族の気持ちを思うと言うべき言葉も
ない。拉致問題は重大であり、北朝鮮の金正日総書記に対し強く抗
議した。金正日総書記の謝罪に関しては、拉致事件について、金正
日総書記は過去に北朝鮮が行ったことを率直に認め、遺憾であり、
おわびする、と述べた。今後二度とこのような事が発生しないよう
にする、とも述べた。早急に家族との再会、本人の意思による帰国
を実現させたい。
 国交正常化交渉再開に関しては、日朝間のこれで、諸懸案は解決
したわけでない。しかし、諸問題の包括的促進が図られるめどがつ
いたと判断した。金正日総書記との会談で、拉致、安全保障、過去
の問題、現在の諸懸案、将来の日朝関係の改善を図るためにも、交
渉再開が適切と判断ができた。日朝関係の改善は朝鮮半島や北東ア
ジア地域、米国や国際社会の平和と安定にも大きくかかわる。日朝
平壌宣言の約束を互いに誠意を持って実施に移すことが最も重要だ。
10月中に交渉を再開するが、日時や場所は外交当局間で調整する。
 不審船事件では、金正日総書記から軍部の一部が行ったとし、今
後更に調査し、このような問題が一切生じないよう適切な措置を取
るとの発言があった。
 核開発疑惑に関しては、金正日総書記は、関連する国際的合意を
順守する事を明確にした。
 ミサイル発射実験に関しては、金正日総書記は、今後期限なく発
射を凍結すると発言した。
 日朝安保協議に関しては、不審船や拉致問題、日本の安全や地域
の安全保障問題について日朝間で安全保障協議を立ち上げたい。
 米朝協議に関しては、金正日総書記は、常に対話の門戸を開いて
いると日本からも米国に伝えてほしいとの発言があった。
 南北関係に関しては、金総書記は円滑に進んでいると述べた。
 過去の清算に関しては、これまでの日本の立場に沿った形で今後
協議していくことになった。
 拉致被害者への補償に関しては、国交正常化交渉の場で、議論し
ていく。
 
 日朝平壌宣言に関して、アメリカの最大の関心事は、核、ミサイル
など大量破壊兵器問題であり、韓国の最大の関心事は、国交正常化と
経済支援である。日本では、日本人拉致事件を最もクローズアップ
して報道している。拉致被害者家族へには、伝えられたのは死亡と生
存という事実だけだ。拉致被害者の8人死亡という衝撃的事実は、日
本国内を揺さぶり、拉致事件に対する日本の国民感情は想像以上に厳
しい。日本人拉致事件に関しては毅然とした日本側の対応が必要であ
る。国交正常化交渉に先立ち拉致事件の真相究明を求める声が強まっ
た。今後日朝国交正常化交渉と同時に、拉致事件最優先で、真相を
明らかにする闘いが始まる。私は、日本人拉致事件は、北朝鮮の過去
の償いをとる人質だと思っていた。拉致の首謀者は、軍部の一部とし
ているが、金正日総書記そのものである事は間違いない。もう十年早
く手を打っていたらと、残念でならない。北朝鮮の譲歩は、悪の枢軸
とアメリカがテロ支援国家と位置付けたブッシュ大統領の軍事攻勢が
背後にあると考える。2003年2月のアメリカのイラク攻撃の可能
性が、北朝鮮に、早急な決断を促したと考える。北朝鮮が、国連によ
る核査察を早期に受け入れ 画期的な日朝合意が、冷え込んだ南北、
米朝関係にも対話と信頼醸成を促す契機となる事を期待する。

 今、日本が戦争の脅威の可能性を考えるとすれば、
1、北朝鮮、2、テロ(アフガン、イラク)3、ソ連、4、中国の順
であろう。日本にとって最も大事な事は、日本国民の生命と安全の確保、
保障であり、拉致被害者には大変お気の毒とは考えるが、拉致問題だけ
を感情論的に取り上げる事は、正しくないと考える。政治的意思で早期
正常化を確認したことの意義は大きい。米や医療など人道的分野での国
際的援助が必要である。北朝鮮という国が国際社会から孤立させないよ
う国際社会の責任ある一員として受け入れる為に、過去の忌まわしい
不幸な日朝間の過去、歴史を清算せねばならない。この時初めて、日朝
関係は敵対から協調へ大きな歩みを始めると考える。
 
                            平成14年9月23日(月)鈴木誠一拝。