雑感126
<GM倒産が意味するもの。>

 米自動車最大手GM(ゼネラルモーターズ)は、平成21年6月1日(月)連邦破産法
11条(日本の民事再生法)適用を、ニューヨークの連邦破産裁判所に申請した。3月末
時点の負債総額は、16兆4000億円(1728億ドル)。総資産は7兆8000億円
(822億ドル)米製造業最大の倒産となった。北米以外の事業は、今回の破産法申請の
対象に含まれない。債務2兆6000億円(270億ドル)の削減に、最終的に55%の
債権者が応じた。過去の米企業破綻では、リーマンブラザーズに次いで、史上3番目の規
模となった。米政府は、2兆9000億円(301億ドル)の追加融資を実施し、一時
政府管理下に置く。「新生GM」を実質国有化し、スピード再建を実現する方針である。
ビッグスリー(米自動車大手3社)のうち2社が倒産した。クライスラーは、破産手続き
を完了した。3社の中で唯一、米政府支援を受けなかったフォードモーターも、救済を仰
ぐ事態に陥る恐れもある。米政府は、新生GMの株式の6割を取得した。GMのフレデリ
ックヘンダーソン最高経営責任者(CEO)は、 シボレーなどの主力ブランドや優良資
産を受け継いだ。「新GM」と、不採算事業を引き継ぐ「旧GM」に分離した。新GM
は、債務、系列販売店の削減を加速し、債務圧縮し、90日で、破産法下から脱却をめざ
す。旧GMは、資産売却を進めて清算する。今回を含め、米政府のGMへの税金の投入額
は、総額4兆7500億円(500億ドル)にのぼる。

 1908年創業のGMは、デトロイト郊外の馬車製造の街、フリントで創業される。
創業者のウィリアムデュラントは、馬車工場で成功した実業家で、1904年に、ビュィ
ック社の経営を受け継いだ。GMは、1908年設立で、米自動車メーカー最大手で、
ミシガン州デトロイトが本拠地である。GMの中興の祖、アルフレッドスローン氏は、
1920年代に事業部制を導入した。高級車「キャデラック」、大衆車「シボレー」が
主力商品である。積極的な買収戦略で規模を拡大し、1931年から2008年にトヨタ
自動車に抜かれるまでの77年間、新車販売台数世界一を誇った。北米だけで47工場を
展開し、従業員数は24万3000人である。1980年から1990年代にかけての日
米自動車摩擦で、日本車批判の急先鋒となった。1963年「GMとともに」は、経営書
のベストセラーとなった。GMは、2008年11月にスズキ株すべてを手放した後も、
提携関係を継続しており、特に燃料電池自動車、ハイブリッド車といった次世代の環境対
応車について、鈴木修社長が率いるスズキは基礎的な技術力が高いGMとの共同開発を軸
に進めてきた。米政府は、景気対策で拡充した「セーフティーネット貸し付け」「緊急保
証制度」の中小企業向け融資を活用し、連鎖破綻の影響を最小限にくい止めた。米政府は、
GM向け債権を保証する制度を設けているが、対象は直接取引のある1次下請けが中心で、
孫請けなど中小企業は対象外になる可能性が高い。連鎖倒産が発生する可能性がある。世
界で国有化による自動車メーカー再建の成功例はほとんどない。 

 What is good for GM is good for America.(GMにとって良いことは米国
にとって良いことだ。逆も真なり。GMの利益は、アメリカの利益。)当時のチャールズ
ウィルソン社長の名言である。GMは、まさに、アメリカ繁栄の象徴だった。拡大路線の
中で見過ごしてきた高コスト体質が、命取りとなった。GMは、燃費効率が悪い大型車の
比率が高いことがあだとなり、日本メーカーの攻勢、ガソリン高で販売シェアを失った。
2008年、GMの米新車販売台数のシェアは22%まで低下した。GMの退職者向けの
年金、福利厚生が手厚く、1人当たり労務コストが日系メーカーと比べ高いことも影響し、
資金繰りに行き詰まった。GMは、2008年、トヨタ自動車に首位の座を奪われるまで、
77年間世界一の座に君臨してきた。巨額の労務費負担とガソリン高で、主力の大型車販
売が低迷し、経営危機に陥った。2008年12月期のGMの売上高は14兆1310億
円(1490億ドル)で4年連続の赤字である。2008年の世界販売は835万台で、
77年間維持したトップの座をトヨタ自動車に奪われた。GMは、低燃費車、小型車など
時代や幅広い消費者ニーズへの対応を怠ってきた。 環境の変化に適応できなければ、結
局、市場から淘汰される。オバマ大統領がGMの再建を支えようとするのは、自動車を戦
略的産業と位置付けている事による。競争力のある製造業の柱にしたいと考えている。
再建までの道のりははなはだ険しいと私は考える。

 GMの創業から破綻に至る1世紀は、米自動車産業、米製造業の栄光と凋落の時代と重
なる。大量消費時代を迎えた1950年代には、GM、フォードモーター、クライスラー
のビッグスリー(米3大自動車メーカー)の米シェアは90%台に達した。自動車は個人
の富と自由の象徴だった。GMは、「キャデラック」を頂点に、「ビュイック」「ポンテ
ィアック」「シボレー」等、所得水準、社会的地位に応じた重層的なブランドを展開した。
1970年代後半の石油ショックを契機に、消費者が燃費の良い日本メーカーの小型車に
流れ、シェアが80%を割った。ビッグスリーは、議会、政権を動かし、日本に米向け輸
出の規制を迫った。ビッグスリーは小型車への転換を拒み、燃費が悪い大型車の生産に固
執した。上昇を続けた賃金を販売価格に転嫁しても、大型車の方が利益が大きかった。労
組との慣れ合いで膨らんだ年金や医療保険等、巨額の負の遺産は、GMなどの経営を圧迫
し、日本メーカーに比べて品質や価格競争力で劣る原因となった。GMは新たな市場を求
めるよりも、過去に手に入れた既得権益を守るのに懸命だった。米国市場は、ビッグスリ
ーが得意とするスポーツ用多目的車(SUV)から多くの消費者が離反した。2007年、
サブプライムローンが本格化した事で、金融市場が混乱し、ローンに過度に依存した販売
手法が大量の焦げ付き、販売急減を招き、ビッグスリーは奈落の底に突き落とされた。
ビッグスリーのシェアは4月、46%に落ち込んだ。

 GMはアメリカそのものであった。GM発祥の地、ミシガン州フリントには、伝説的な
GM経営者の名前を冠した「スローン博物館」がある。シボレーから、いつかはキャデラ
ックへは、米国人が人生に描く夢だった。大量生産によって自動車を庶民の手に入るよう
にしたのはフォードの創業者、ヘンリーフォードであった。GMは単に実用機械として車
を売るのではなく、入門車から超高級車までを品揃えし、毎年のモデルチェンジで消費者
のあこがれと欲望をそそった。合理性だけではなく、豪華さ、楽しさを追求する米国精神
と重なった。GMが、米国流消費生活の象徴だったのと同様、労働者にとってGMは、米
国が誇る豊かな中産階級の生みの親でもあった。「マイホーム」という概念は、GMをは
じめとする自動車産業がもたらした富によるものが大きかった。GM車をはじめとする米
国の自動車は、米国の文化や精神を形作るのに大きな役割を果たした。高級車を持つこと
はステータスシンボルであり、多くのアメリカ人の夢だった。アメリカの車は、ガスギャ
ズラー(ガソリン食虫)と言われるほど燃費が悪い。日本車の対米輸出は、急増し、自動
車問題が日米の大きな通商摩擦になった。ビッグスリーは、議会に圧力をかけ、輸入を阻
止しようとした。労働組合も日本車反対運動を展開し、デトロイトでは労働者が、日本車
をハンマーで壊すという出来事が起こり、日米自動車紛争が大きな話題になった。日本の
自動車メーカーは輸出の台数を自主規制することで、自動車問題は沈静化に向った。日本
の自動車メーカーは摩擦を避けるために現地生産を積極的に行うようにった。トヨタの自
動車の40%は、現地生産となった。アメリカの自動車会社も「トヨタ生産方式」を取り
入れるなど合理化を進めてきた。

 GMの没落は、アメリカ製造業、ブルーカラー全体の没落をも意味している。GMと共に
去りぬ。米ブルーカラーの夢の記事である。GMは、アメリカのブルーカラーに安定した職
場と中産階級への上昇のチャンスを提供してくれた。GMは製造業の優位と勤労者の安定
した職場のシンボルだったが、その時代が終わってしまった。全米自動車労組が高水準の賃
金を引き出した結果、GMの労働者らは、自宅、別荘、ボートまで所有することができ、社
員割引で購入した車に乗って夏のバカンスに出かける等、中産階級レベルの生活を謳歌した。
GMの労働者は、健康保険料を負担する必要もなく、十分な年金で安定した老後生活を保障
された。労働者は、世界最大の企業で働いているという自負心も大きかった。GM神話は、
1980年代から崩れ始めた。1970年代の石油危機を契機に、消費者の嗜好がGM、フ
ォード、クライスラーのビッグ3が作る大型車から、燃費のいい小型車に移り始めた。消費
者の嗜好の変化にうまく乗った日本のトヨタやホンダが徐々にシェアを広げ始めた。ビッグ
3は1990年代に多目的スポーツ車(SUV)開発に活路を見出そうとしたが、SUV市場でも
日本の燃費のいい小型SUVに市場を奪われた。メキシコ、アジア地域でGMの工場が閉鎖され
始めた。アメリカ国内でも自動車産業で活気に満ちていたミシガン州のフリント市が衰退に
向かうなど、一時、自動車産業で大いに潤った五大湖周辺地域が停滞した「Rust Belt(サビ
地帯)」に変わってしまった。GMは単なる一企業ではなく、アメリカのシンボル的な存在
だったので、GM倒産は、アメリカに、いや世界中に大きな衝撃をもたらした。

 日米の自動車産業の興亡を描いた「覇者のおごり」(1986年)での、デービッドハル
バースタムの言葉である。「自動車は、アメリカの精神の広がりと根無し草的性格をともに
助長した。小さな町が狭苦しく思えれば、近代的アメリカ人のやるべきことは、車に乗って
どこか別のところへいくだけのことだった。」ガソリンの高騰や環境問題、交通渋滞等によ
って、自動車を持つことは喜びから負担に変った。100年前と同じように、米国の自動車
産業は自動車をめぐる新しい「夢と希望」を再び作り出せるだろうか。?

 GMは経営学者ドラッカーの勧告を受け入れ、労働者を人間として扱う労働政策を取る
ようになった。具体的には医療補助や年金制度などを積極的に充実させていった。日本企
業では、労働組合は企業内組合で、それぞれが独立している。アメリカでは産業別組合が
普通で、自動車産業の場合、全米自動車労組(UAW)に工場別に所属する。各職場の組
合は、UAWの支部で、「チャプター」と呼ばれる。自動車工場ではストが頻繁に行われ
る。アメリカの自動車会社の労働賃金は極めて高くなった。コスト高に加え、アメリカの
自動車メーカーのデザインは時代遅れで、日本車や欧州車に比べると垢抜けしておらず、
消費者離れを引き起こしてた。

 GMの倒産が日本企業に負の連鎖を及ぼすのは必須である。日本企業102社に製品納
入代金の焦げ付きで不良債権が発生する恐れがある。GMが売却する独オペルは、カナダ、
自動車部品メーカー、マグナインターナショナルが買収に動いている。マグナインターナ
ショナルは、携帯電話で使用される21世紀の石油、リチウムイオン電子の最大手である。
トヨタ、スズキ、いすずは、GMと合弁会社を持つ。クライスラーは、イタリア、フィア
ットが出資し、日産と車両の相互供給体制にある。日本勢は、規模を縮小して、収益基盤
の強化を急ぐ。トヨタ自動車は、GMと業務提携を維持する方針である。部品供給、現地
での販売に支障をきたす可能性がある。日本の部品メーカーは、GMとの取引が大幅に縮
小する。トヨタの渡辺捷昭社長は、GMとの米合弁工場NUMMIについては、継続と表
明した。大型車が中心の商品構成は、ガソリン高騰で深刻な販売不振を招いた。GMと取
引がある日本の部品メーカーは、売掛金が焦げ付き、GM向け売り上げ減少への懸念を強
めた。連鎖破綻の可能性のある米系部品会社も危ぶまれる。日本の自動車各社が最も懸念
するのは、GMの仕入れ先の米系部品会社が連鎖倒産して、主要部品の現地調達が不可能
になり、日本の自動車メーカーが、米国生産がストップする事態に追い込まれることであ
る。自動車は1台に2万点もの部品を使う。トヨタ、ホンダは、部品の現地調達率を高め
ており、GMの経営危機が深刻化し、部品供給停止の不安が高まった。鈴木修社長が率い
るスズキ等取引関係のある日本の部品メーカーの不安は根強い。GMを取引先とする国内
企業は、自動車販売や整備などGMを仕入れ先とする31社を含め133社という。日系
企業102社で焦げ付きの可能性がある。49社は売上高50億円未満の中小企業で、日
本で連鎖倒産が起こる可能性は否めない。

 GM破綻の究極的原因は、魅力のある車を作ることができなかった事である。最近は若
い人を中心に自動車への興味が薄れている。GMは、「ハマー」「サターン」等は売却の
方針である。GMに部品を納入しているメーカーのうち、不良債権が発生する恐れがある
のは50社である。ディーゼルエンジンを供給していたいすず自動車が100億円売掛債
権を持っている。自動車部品最大手のデンソー、曙ブレーキ工業、アイシン精機、ブリヂ
ストン、三菱電機、日立金属、矢崎総業、ヨロズ、タカタも販売未収金が焦げ付く可能性
がある。企業の多くは売掛債権を保証する米政府の支援制度の適用を申請した。ハイブリ
ッド車で次世代技術分野で協力しているスズキの鈴木修社長は継続の方針である。合弁工
場では、スズキの「CAMI」(カナダ)、いすずの「DMAX」(米国)、「ISPO
L」(ポーランド)、トヨタ自動車の「NUMMI」(米国)がある。

  トヨタは、ハイブリッド車、燃料電池自動車等の次世代の環境対応車の開発、GMとの
共同開発を検討してきた。米国でのトヨタのディーラー網は1450店ある。GM車の販
売も手がけるのは650店と半数に近い。GMとの関係が歴史的に深いいすず自動車も、
GMとの提携関係が危ぶまれている。いすずによるGMのトラック部門買収は、実現には
ほど遠い。当時GM副社長だったヘンダーソン社長と、いすずの井田義則会長の個人的な
信頼関係は深い。トヨタ、ホンダ、日産等日本勢にとって北米市場が世界販売の3割を占
める主戦場である。アメリカ政府は、新車購入に補助金を出す「スクラップインセンティ
ブ」の導入を表明し、この経済効果で300万台の上積みを期待する。GM再建策の骨子
である。  
@GMは連邦破産法11条を申請、「新生GM」が資産を買い取る。 
A米政府は301億ドル、カナダは95億ドル追加融資する。 
B米政府はGM株60%、カナダは12%、全米自動車労働組合(UAW)は17.5%
と新株引受権2.5%分、債権者は株10%と引受権15%分を取得する。 
C取締役はカナダが1人、UAWが1人、残りは米政府が選出する。 
D米政府は重要問題のみに議決権を行使、早期に株を手放す。 
E新たな債務圧縮案に債権者の54%超が同意する。  

 英労働党政権が1970年代、ロールスロイス、ブリティッシュレイランド等経営危機
に陥ったメーカーを国有化したが、結局、バラバラに解体されて、海外資本に買収され、
英自動車産業は事実上滅びた。政府が企業にどのような自動車を作るべきかを命じた時点
で、製品は市場、消費者のニーズから離れてしまう。自動車販売が回復せず、業績の低迷
が続けば、血税投入に頼らざるを得なくなる。クライスラーは伊大手フィアットの手に落
ち、フォードモーターだけが自力再建を続ける中、GMへの政府による「史上最大の介入」
が失敗すれば、米自動車産業の衰退は決定的になると私は考える。

 GMのケントクレサ会長は、トヨタ自動車との米合弁工場、ニューユナイテッドモータ
ーマニュファクチャリング(NUMMI、カリフォルニア州)での提携を継続するかどう
かを検討している。トヨタのハッチバック「マトリックス」の姉妹車であるバイブのほか、
トヨタのピックアップトラック「タコマ」や小型乗用車「カローラ」を生産している。 
提携関係が見直された場合、もっとも大きな影響を受けるのがスズキである。GMが、
2008年11月にスズキ株すべてを手放した後も提携関係を継続しており、特に燃料電
池自動車、ハイブリッド車といった次世代の環境対応車について、スズキの鈴木修社長は、
基礎的な技術力が高いGMとの共同開発を軸に進めてきた。いすず自動車も、GMにディ
ーゼルエンジンを供給するなど歴史的に関係が深い。GM向けの売上高は、現在でも売上
高の1割を占めるだけに、業務提携は続ける意向である。平成14年当時にいすず再建支
援を担当したGMのヘンダーソン社長との個人的な信頼関係に期待している。トヨタが
「カローラ」GMは「ポンティアック」を生産しているが、GMがポンティアックブラン
ドから撤退するトヨタのハイブリッド車をGMに供給する提携に広がる。トヨタは今期
8500億円赤字の決算の見込みである。余剰生産能力は、350万台である。世界市場
の急速な多極化となった。日本の自動車保有台数は、8000万台。乗用車の平均使用年
数は、11年。1台を複数の人が利用するカーシアリングが静かに広がっている。ホンダ
のハイブリッド車「インサイト」が快進撃を続けている。
 
 ビッグスリーが生き残るためには、自らが競争力を高め、効率的になるしかない。GM
倒産がアメリカ経済に与える影響は、次のように考える。アメリカでは部品会社を含め自動
車産業で働いている従業員の数は73万人である。そのうちビッグスリーの時間給の工場労
働者の数は24万人である。ビッグスリーの操業が完全に止まった場合は、関連業界を含め、
296万人が職を失う。直接雇用で24万人、間接雇用で98万人、関連雇用で174万人
である。初年度に1500億ドルの所得が失われる。倒産した会社は消費者の信頼を失う。
倒産が現実のものとなれば、ビッグスリーの自動車の買い控えも出てくる。 
 
 GM破綻は、アメリカの花形産業としての自動車産業の終焉を意味すると私は考える。
アメリカ自動車産業の象徴であったGMは、アメリカ自動車産業界を、軸無き業界へと変容
させた。典型的グローバル企業だったGMが国家丸抱えになることで、アメリカがグローバ
ルから統制経済化へ一歩踏み出してしまった。グローバル経済が終焉し、保護主義的で、閉
鎖的で、不自由で、国家主義的な世界に変貌した。米系部品メーカーが連鎖破綻した時の代
替部品確保は、現地生産の維持には、不可欠である。閉鎖的で、GMと取引がある日本の部
品メーカーは売掛金焦げ付き、GM向け売り上げ減少は、部品メーカー、系列販売店網を含
め、GMが抱えている雇用は巨大である。クライスラーは、イタリアのフィアットへの売却
手続きが完了すれば、破産法による処理から離脱できる。リーマンショックによる金融危機
によって、自動車販売が激減したの事が、GM破綻の直接の原因である。 

 自動車産業は、300兆円の世界市場である。インドのタタ自動車「ナノ」の19万円の
自動車を発売等、新興国の躍進がある。世界の自動車産業従事者は、アメリカで100万人、
日本で85万人、EUで220万人である。オバマのGM一時国有化は。雇用維持が大義名分
である。GMが改善に鈍重だった理由は、過去の成功体験が余りにも大きかったためである。
GM問題が泥沼化すると、「オバマのベトナム戦争」となりかねない。どんな企業も自己変
革を怠れば没落する。高コスト体質、低燃費小型車シフトの遅れ、強すぎた労組、過大な退
職者向け年金負担、地道な技術開発より派手なM&A(合併買収)戦略の優先、新生GMは、
米政府が60%の株式を持つ国有会社になるが、危機対応を保護主義の口実にしてはならな
い。政府が一日も早くGM株を手放すのが望ましい。

 GMの破綻の負のイメージが生じた事で、消費者離れは避けられない。「シボレー」「キ
ャデラック」などの主力ブランドで消費者を引き留めながら、ソーラーカー、ハイブリッド車、
燃料電池車(水素で発電)、電気自動車など魅力ある車作りで、いかに消費者にアピールでき
るかが鍵を握る。短期的な利益を追求し、利益率が高い大型車依存の構造を変えられず、環境
技術でも後れをとった。中国、インドの自動車メーカーの台頭により、自動車産業が再編され、
自動車産業の世界地図は大きく塗り替った。アメリカの自動車産業が崩壊すれば、アメリカ経
済に壊滅的打撃を与える。27000人の人員削減、 削減対象のディーラーが訴訟の動きなど
再建の前途は波乱含みで、オバマ政権は大きな政治的リスクを負った。 アメリカ経済は、破綻
寸前である。ドルの信認が、いつまで続くだろうか。アメリカ国債を中国がどれくらい買い続
けるのか。GM「国有化」で、迅速再建へ=破産申請、人民元レートの変動幅拡大を促した。
「中国が保有しているドル資産は非常に安全。」と強調し、世界最大の米国債保有国である中
国側の懸念一掃に努めた。中国はドル下落による資産価値の目減りを警戒している。米側は中
国に米国債の継続購入を求める。GMの従業員は、6万人から4万人、ディーラー数6200
から3600社、主力車種10から4ブランド、工場47から33に縮小して再スタートする。
「シボレーボルト」プラグイン電気自動車は、2010年に発売し、2012年までに14種
のハイブリッド車を投入する。2014年までに生産する自動車の65%を、植物から作った
バイオエタノールとガソリンの両方を燃料として使えるフレックス燃料車とする。私は、ホン
ダの燃料電池車開発の藤本幸人氏の動向に注目している。

  2008年9月15日(月)リーマンブラザーズ倒産に端を発した金融恐慌が、2009年
6月1日(月)ついに、GM倒産という実体経済に影響を及ぼした。他産業への負の連鎖が危惧
される。まだまだ恐慌の入り口に過ぎないと考える。2009年7月現在の自動車の生産販売台
数である。
@、日トヨタ897万台、A、独フォルクスワーゲン623万台、B、仏ルノー日産606万台、
C、米新生GM600万台、D、米フォード540万台、E、韓現代419万台、F、伊フィアット
クライスラー415万台、G、日ホンダ378万台、H、仏PSA326万台、
I、日スズキ236万台、J、独ダイムラー207万台、である。
車の販売台数勢力地図が、いかに変化していくか。注意深く見守っていきたいものである。GM
倒産が、他産業へ与える影響から目が離せない。

                          平成21年7月1日(水)鈴木誠一拝